2019.06.24ひきこもり支援か軟禁か 親が頼る引き出し業者、裁判も
「悪い夢のようだった。心の傷は一生消えない」
東京地方裁判所の傍聴席で出会った原告の男性は閉廷後、そう記者に語った。
昨年5月のことだ。原告の説明や訴状によれば、自室で食事をしていたところ、突然見知らぬ4~5人の男と父親が部屋に入ってきた。父は「これからこの人たちのお世話になりなさい」と言い、部屋を出た。
家を出るのを拒み、知り合いに電話で連絡をとろうとしたが、男たちに体を押さえつけられた。「助けて」「拉致だ」と叫び抵抗したが、両脇をおさえられ、車に押し込まれたという。
連れて行かれたのは東京都新宿区の施設。何度もスタッフに解放を求めた。だが施設側は「あなたは『未成熟子』なので権利はない」などと言い、拒否された。当初8日間は内側からあけられないカギがかかる監視付きの部屋で軟禁状態に。恐怖から食事にも手をつけられずにいたところ、説明も同意もないまま精神科病院に医療保護入院させられた。入院後しばらくの間、拘束帯をされオムツをつけられた。入院は50日間に及んだ。
退院後に施設に戻る際「誓約書」を書かされた。英会話やパソコンなどのカリキュラムへの参加、家族に連絡をしないことなどを約束させ、守れなければ再入院に同意するという文面だった。
原告は、入所者仲間と施設近くの法テラス(日本司法支援センター)に駆け込み、その後現在の弁護団メンバーにつながって、施設から脱出した。連れ出しから3カ月が過ぎていた。「なぜあんな施設と契約したのか、親へのしこりもある」
弁護団によると、入所者の多くは携帯電話や財布を取り上げられ、外部への連絡を制限されている。本人のSOSを受けて、この会社の施設から数人を弁護士が「救出」した。この原告男性とは別に、同じ施設に子どもを入所させていた親が、半年間の研修費などとして支払った685万円の返還を求める訴えを起こしている。弁護団は逮捕監禁罪での刑事告訴も視野に入れている。運営会社は暴力的連れ出しや違法行為を否定、裁判で争う姿勢だという。